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10月 爽秋は足早に惠泉塾にやって来た

 今年の夏は北海道余市でも思いのほか凌ぎにくかった。例年ならば、クーラーも扇風機もない惠泉塾生活で、

まあ、1週間も暑さを我慢すればたちまち風の気配と共に虫の音、空の雲が冷涼な空気を運んで来てくれたものだが、今年は3週間、4週間たってもなかなか冷涼とは行かなかった。冬の積雪の少なさも異常だったが、春から夏にかけての日照不足と低温傾向もこれまでにはなかったことらしい。果樹栽培や農業担当者によれば、近隣の農家に聞いても、やはり異常気象による作物の変質や不作は否めないとのことだ。 ともあれ、収穫の秋を迎えた今、サクランボに続く果物、プルーン、洋梨、千両梨や、夏野菜、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンなどの取り入れ作業たけなわである。作物もさることながら、ここ惠泉塾では、来塾したときには倒れていたような人が一人また一人と息を吹き返し、脱皮しながら成長を遂げていく姿が何と言っても爽やかでまぶしい。燦然と光っている。これから深まる秋と共に、果樹園や農園での豊かな“収穫”が楽しみだ。 年度途中から入塾したKさんが7月から、S君が9月から、畑に出て農作業に勤しんでいる。また、惠泉ヴィレッジに住むHさんが昨年7月から畑に出るようになって“奇跡”の1年と2ヵ月がたつ。同じく惠泉ヴィレッジのAさんは農作業よりもパンづくりを選び、マナベーカリーで職業訓練を始めて4ヵ月、次第に生気を取り戻し、個性を発揮し始めている。いずれも医療と教育、教育と家庭との密な連携体制が特に欠かせない若者たちである。入塾して日の浅いKさん、S君、3年選手のAさん、10年選手のHさんもいる。皆、惠泉塾に満ちている空気に真に触れたときから愛に目覚め、聖書の価値観に立つ惠泉塾の理念を受け入れ、甦りの命に“恢復”されることを目指している。 人をほっと安心させ、寛がせる空気はどこから生まれるのか? 補い合い、愛し合って暮らす人の輪の中に存在し、懐の深い大地に向かって懸命に土と格闘する中に存在するようだ。惠泉農園も㈱ヴィタポートも、このように無から有を生み出す感動的で創造的な神様の仕事に貢献するために造られた。利害得失を考えず、捨て身で相手を生かすような共同生活は信仰に支えられて初めて可能だということが、惠泉塾20年の歴史によって証明された。ものづくりだけでなく、人づくりにも熱意を燃やせる原動力はどこから来るのか? 早朝の聖書の学びに本気で取り組み、神から命を分かち与えられるところにある。本物でなければ満足を得ない、律儀で不器用な魂ばかりが集められた。その日、そのとき、与えられた仕事を、従順に誠実に果たしていく中で、生きる喜びや働く楽しさを再発見する。 今年度の閉塾まで後2ヵ月を残すのみとなった。開塾から20年を越え、もしかしたら曲がり角に来ているかも知れない惠泉塾の活動。その行方を模索しつつ、何千年も変わらない真理の探究者として、永遠の神の国への巡礼者として、精一杯道具となって用いられたい。そして、塾生たちが完全に罪から解放されて主の復活の証人として巣立つ日のための、応援を続けていきたい。